ハイブリッドカーが語られるとき、注目されるのがその「静かさ」です。それは低速走行の時にはガソリンを消費せず、蓄電した電気で「モーター」を回すからです。モーターはエンジンとは違います。エンジンは基本的には化石燃料であるガソリンを燃焼させ、その勢いを運動エネルギーに転換しています。「燃焼」といっても、それによって車を走らせるわけですから、「燃える」というレベルではありません。エンジン内で「爆発」しています。その反動でエンジンを回転させ、車を動かします。もちろん、一度の爆発では意味がないので、エンジン内でのガソリンの燃焼は連続して起こっています。エンジンを回転させたい時にはより多くの燃料を燃焼室に噴射し、回転を速くします。
そうして発生したエンジンの回転をタイヤに導き、車は走行するわけです。その中で一番エネルギーが必要なのが「走り初め」です。停止している車を走行状態にする際が、一番エネルギーが必要です。やはり、ガソリンもその際に一番失われます。車が速度を上げていけば、その分慣性エネルギーも働くので、より小さなエネルギーで車を加速させることができます。より小さなエネルギーということは、あまり燃料を消費しないということです。
ハイブリッドカーでは、この走りはじめから燃費の悪い速度域をカバーするように作られていることがほとんどです。つまり、ハイブリッドカーが低速走行をしている際は、エンジンは回っていません。このことが、「ハイブリッドカーは静かだ」という印象につながり、また実際そうであるのです。
エンジンが回れば、隠し切れない「音」がします。それはエンジンをかけた瞬間から、近くにいる人みんなにわかるようなものです。なぜそのような音がするかというと、簡単です。エンジンの中で燃料が燃焼しているからです。
それが今までの「車」の音でした。私たちが「車が来ている」と認識できる、馴染んだ音でした。ですが、ハイブリッドカーでは低速走行時にはその「馴染んだ音」が聞こえてこないのです。そのための「危険」もやはりあります。
車と人が足相する場面は、主に街中です。そして、お互いに注意しなければいけないような場面での車の速度は、ほとんどが低速です。40キロから60キロで走行している場合、それは安定して走れる幹線道路である場合が多いです。そのような道路では歩道と車道の区分けははっきりされていて、お互いに安全に通行することができるでしょう。
ですが、路地の狭い市街地などではそうもいきません。車の進行方向に人がいることは多いものです。そのような際はお互いに注意しながら走行しなければいけないものですが、主に歩行者に気づいてもらい、進路を空けてもらう必要があるでしょう。通常であれば歩行者は、背後から迫る「音」から「車が来た」と認識できるのですが、それがハイブリッドカーの場合、全然音がしないので気づかれません。そのため、なかなか歩行者が気づいてくれないことがあります。
これは静かすぎるための副産物なのですが、最新のタイプではその問題を克服すべく、注意を喚起させることができる音を流すなど、工夫がされています。これはハイブリッドカーの能力を顕著に表した現象です。